その日の青空 [詩]
明るい日の記憶があって
水引草は
いつでも夏の終わりを
美しく演出する
そう あの日
不意に言葉が途切れ
私たちは立ち止っていた
ひとしきり
風が吹き
森は
ひとつの世界に閉ざされる
私たちがためらいがちに
唇を重ねたとき
杉木立の奥で
いっせいに水引草が揺れ
どこまでも神寂びた静けさの中で
ひっそりと
秋の花々の
饗宴が繰り広げられていた
ハギ ミゾソバ ツリフネソウ リンドウ ノコンギク
私たちの影は
花々の中に映し出され
たちまち
官能の宴に曝される
宴は
やがて終焉を迎え
森は
光を誘い
私たちに
その日の青空を
記憶させる
2008-10-05 15:51